「つくりもの」から伝わる感情。「地獄でなぜ悪い」

fumi

要約:こんなに感情があちこちに連れ回される映画はない。つくりものだからこそ伝わる感情があった。園子温監督の『地獄でなぜ悪い』の感想、レビュー。ネタバレを含みます。

あらすじ: とある事情から、激しく対立する武藤(國村隼)と池上(堤真一)。そんな中、武藤は娘であるミツコ(二階堂ふみ)の映画デビューを実現させるべく、自らプロデューサーとなってミツコ主演作の製作に乗り出すことに。あるきっかけで映画監督に間違えられた公次(星野源)のもとで撮影が始まるが、困り果てた彼は映画マニアの平田(長谷川博己)に演出の代理を頼み込む。そこへライバルである武藤の娘だと知りつつもミツコのことが気になっている池上が絡んできたことで、思いも寄らぬ事件が起きてしまう。

シネマトゥデイ

感情が引きずり回された

まずは、とにかく面白かった。園子温作品は気になっていたけど見るのは初めて。なんの予備知識も無しに見に行った。

ここまで感情があちらこちらに引っ張り回される映画はなかった。笑い、怖さ、悲しみ、切なさ、あちこちのベクトルに振られまくった。楽しいという意味で「こんなに心が疲れるか」というほど。

悲しかったりおかしかったり恐かったり。泣いたり笑ったりおびえたり。泣き笑いは今までも体験したことあるけど、怖さ泣き、怖さ笑いって初めてだったかもしれない。そこまで感情を動かすか。“感動する”を英語では move というけど、まさにそれだった。

「つくりもの」のリアリティ

オープニング、10年前のシーン。映画狂の青年たち・ファック・ボンバーズの描写が、なぜここまで“浮ついて”いるのだろうと思ってみていた。この嘘くささにどうやって入り込むんだろうと不安になりながら。オープニングから「つくりもの」感が満載。けれど、この空気感こそがクライマックスにリアリティを与えていたんだ。

映像でなく感情レベルで恐くなった。

もともとネットに転がるグロ画像には強い方。バラバラ死体、事故や銃撃でぐちゃぐちゃの写真を見ても気持ちが揺れることはないし、引くこともない。敢えて見に行くくらい。

この映画の戦闘シーンの残虐表現は意図的に「つくりもの」にしている。闘い自体は非常に迫力がある一方、コミカルに飛んでいく手足や頭部。この手の映像が苦手な人はそれだけでダメだろうが、自分にとっては恐くなる要素が見当たらない映像表現のはずだった。

話の展開に一つのかけらもリアリティを感じない。どいつもこいつも愛すべきバカだけれど、感情移入はしない。誰かに肩入れするのではなく均等にすべての人を見ていた。それが、ばかばかしく笑いながらも、彼らが「死んで」いく様に悲しみを覚えた。殺される怖さを感じながら。

エンターテイメントに仕立てるために、こういう表現をしたのだろう。逆に僕は、グロさを排除した血まみれ表現だからこそ、感情のみを受け取った感じ。登場人物の感情が伝わってきてしまったものだから、背筋が寒くなってしまった。映像的表現を越えて、感情に直接迫ってきた

それを支えているのが、長谷川博己の快笑。堤真一の顔芸とも言える表情。星野源の腰抜けぶり。二階堂ふみの自由勝手さの魅力。國村隼の説得力。

お互いの熱い想いに泣ける。

廃墟の映画館でファック・ボンバーズの佐々木と平田が争っているシーン。大人になってもまだ夢を見続け、それにもう乗れなくなった佐々木の争いのシーン。平田の熱い想い、その想いを信じて一緒にやってきたが先が見えないことにいらだつ佐々木。その想いのぶつかり合いに涙が出てきた。

國村隼が組員に向かって、映画を撮ることを伝えるシーン。「俺だってバカじゃねえ、今映画を撮ってるときじゃないことくらい分かっている」といいながら、組員を説得していく。組長なのだから説得する必要なんてないのだろうけど、組員を納得させていく。見ている自分も、「え、この状況で映画撮ることに組員が納得するわけないだろう」と思いながらも納得してしまい、妻(友近)に対する心意気に涙した。

星野源と二階堂ふみが最後に手を触れあうシーン。あんなコミカルな表現でありながら、その時だけの限られた仮の関係でありながら、その刹那に泣いてしまった。その二人の最後が綺麗で、エロかった

死というたったひとつの場所へ向かっていく純粋な愛ゆえに。

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