自分で居場所を作ること。〜「桐島、部活やめるってよ」

要約:「桐島、部活やめるってよ」の感想。人の目を気にして「ポジション」を確保するのではなく、自分で居場所を見つけてる作るって事を描いた作品。

今頃になって「桐島、部活やめるってよ」の感想。話題になったときには触れないままだったけど、見て良かった作品。

どう人と付き合っていくのかが非常に繊細にイメージ豊かに描かれていた。テレビで一度見ただけだけれど、細かなところまで印象に残る描写だった。

しかし、最近活躍している人がたくさん出ている映画だ。これはかれらの演技力がないと成立しないだろうな。

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その人の居場所を“笑うタイミングの違い”や“視線”で描き分ける。

見事なまでに、それぞれの人物の気にしていること、人付き合いのパターンを細かく描いていた。

女子が4人、教室で話すシーンはそれぞれの視点から何度も描かれ、その中でその人のポジションがあぶり出される見事な描写。

バド部の実果(清水くるみ):

美人で宏樹の彼女、梨紗(山本美月)とその友人沙奈(松岡茉優)の前では、「部活は内申書のため」というけれど、同じバド部のかすみにはすぐに、「あの二人に本心を言うつもりはない」と打ち明ける。

かといって、桐島を待っている梨紗に対して、遠くから手を振る気の遣いよう。気の遣う場面では4人で前田を揶揄する場面でも出ていて、梨紗と沙奈が馬鹿にして笑っている時に、ほんの少しの間で笑いを合わせる。

かすみ(橋本愛):

この4人の場面では、かなり間を開けてから笑う。それまでは特に反応しない。それでもこの集団に居続けられるのだから、気を遣いながらも自分らしくいる能力がある意味で非常に高い。前田(神木隆之介)と偶然映画館で出会ったときに会話する、つきあいの良さ。なのにイケてる竜汰と付き合っているという間口の広さ。
前田に感情移入して見ていたら、もしかしてかすみとは少し仲良くなれるのかもと思っていたのに実はパーマをかけてるイケテル男子と付き合っていて驚愕した。

かすみは、純粋そうに見えて実は一番計算高いのかもしれない。 かといって人に対しての臆病さが少ない素直でもある。

沙奈(松岡茉優):

運動もできて格好いい宏樹と付き合っていることがステイタスなんだろう。

梨紗(山本美月):

美人ポジションにいることに衒いが無い。後輩を連れてこられて可愛いと言われても照れもせず彼氏が居ることに「ゴメンね」と余裕で返す。綺麗と言われて育ってきており、自分の女性性を生きていく武器に使える人。

パーマ+カーディガンの男子、竜汰(落合モトキ):

女子とも普通に話して、トイレで手を洗った時の水滴を女子に飛ばせてしまうという、人付き合い“上級者”。「寺島座れ」って先生に言われてクラスに笑いが起きるという、お調子者人気者ポジション。

宏樹(東出昌大):

同じ帰宅部で、校舎裏でバスケをする竜汰や友弘よりも明らかに運動性能が高く、バスケットのボールハンドリングやシュート、随所でうまい。それだけで、自然と人気を得る人だということがわかる描写。

前田(神木隆之介):

同じ映画部の武文に誉められると、「たけふみ〜」とおなかに頭突きをする。イケてる人はあんな返しはしないよなあ。上着の袖を手の平にかかる程度まで伸ばす着方。なで肩で内股で。人前で自信を持てない様子が見事なまでに仕草に表れたりしている。

* * *

で、イケてるグループとイケてないグループをつなぐのが、橋本愛。

居場所が変わればポジションも変わる。

サッカーのチーム分けを花いちもんめ形式で選ばれるという残酷な場面。高校でもまだそんな決め方をするのかと腹が立つくらいの場面。「自分より下がいる」と思っていたら、最後まで選ばれない前田と武文。誰に言うわけでもなく、「今日は調子が悪いから」と自我がやられないように予防線を張る場面が切ない。

映画部は見事なまでに暗くじめじめした“吹きだまり”。阿片窟みたい。ただ、クラスの中では下層にいる前田と武文も、映画部では「上」。自分の意見も通る場所。

今は将来に繋がるのかという悩み

今部活でやっていることで将来飯が食えるわけではないことを、みんな葛藤していた。

宏樹は今の自分が将来の夢に繋がらないことに絶望し、あきらめを見いだして部活をやめた。

逆に、自分がドラフトに呼ばれないことを分かっていてもあえて“しがみつく”野球部のキャプテン。

実果は死んでしまった姉を超えられず苦しみながらも、バドミントンに打ち込む。才能がないことに何度も膝をつきながらも、続けている。

前田は、将来映画監督は無理といいながら、今やっていることが面白いと語る。投げやりなあきらめではなく、どこかで映画に携わることを信じて今を生きている。

かすみは、そのへんするりとやれてしまう。

自分で居場所を決めた前田。

それぞれの視点から同じ場面を何度も描き直すたびに、「この人ってこういうポジションなんだ」と見えてくる。スクールカーストがくっきりしてくる。

自分の時はどうだったかと言えば、メジャーとマイナー に大きく分けていて、マイナーに属していた。理系的で女子とは話せなくて。ただ、男友だちにマニアックな話を共有できる相手がいたので特に不幸せではなかった。

映画を見ていると、周りが見えすぎるのも不幸せだなあと思った。おそらくあそこにいる人たちはそこまで客観視をしている人。

人と「うまくやる」ことで自分の居場所を確保しようとするのは、人の目を気にすることになる

でも、前田がその殻を打ち破った。

前田は、他の人との関係で自分の居場所を決めるのではなくて、自分で居場所を決めようとした。

宏樹を遠くから見るために、屋上にいる吹奏楽部の部長。最初前田は撮影のためにその場所を譲ってもらえず、遠慮して引き下がっていた。しかし最後には真っ直ぐ主張してその「場所を確保」する

これは自分で居場所を確保したことを描いていたのだろう。

桐島頼みの「居場所」

イケてるグループの連中にとって大事なことは、今その時を楽しむことだった。

逆にイケてないグループは、悩みながらも映画やバドミントンなど、形になることをしている。

そしてイケてるグループの連中は、なぜだか桐島に頼りっきり。いなくなっただけで不安の塊。桐島と繋がっていることがステータスであり安心の砦(居場所)だったのかもしれない

そして、イケてるグループで唯一将来を見据えていたのが桐島ではないか。

桐島は、みんなから期待されているけど、自分の力と周囲の力のギャップにいらだっていたんじゃないだろうか。桐島は、自分の将来と今の自分が繋がらないことに徹底的に絶望してしまって部活をやめたんじゃないだろうか。

そして、頼りの桐島が居なくなったことで、居場所が決められなくなった人たち。

最後に宏樹が桐島に電話する。このシーンは“最終的に宏樹も桐島を頼って電話をかけたんじゃないか”という見方も多いよう。

僕は、そうではないと感じた。

最初は宏樹を試合に誘っていたキャプテンも、最後には自分たちで勝てそうだから応援に来てと言い、宏樹を頼らなくなる。撮影場所と映画作りを守るために宏樹たちに食ってかかる映画部の連中。そんな想いに触れることで、宏樹の中で何かが変わり始めたんじゃないか。

宏樹は、今まで周りの連中がやってきたように桐島を頼っているんじゃなくて、今やれることをやろうという想いをなんとかして桐島に伝えたくなったのではないかと受け取った。

そこまで明確に前を向いたわけではないだろう。

桐島にまだすがりながらも、この状況からに抜け出したいという“あがき”なんじゃないか。

前田が自分で居場所を確保したように。

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自分で居場所を作ること。〜「桐島、部活やめるってよ」」への4件のフィードバック

  1. 見終わった後終始「退屈すぎる糞映画w」と馬鹿にし、内容を分かったつもりでしたがレビューで高評価なのを知りネットサーフィンで再確認したところ、ここの感想で真価が分かりました。
    実に分かりやすく、大変感銘を受けました。
    またこの作品を見ようかと思います。

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    • 細々とやっているブログを読んでいただき、このような過大なお褒めの言葉まで頂き嬉しい限りです。最後の結末は、きっと人によって解釈が分かれるところで、それがいいんだろうなあと思っています。僕も見返したら、考えが変わるかも。

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  2. 解説よく理解できました。ありがとうございます。
    たぶん、この感想がそのままこの映画の作り手の思っているところなのでしょう。
    最後に、桐島の後ろ姿だけでも出てきたら気持ちよく見終えたと思う。

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    • 読んでいただきコメントも頂きありがとうございます。「そのままこの映画の作り手の思っているところ」とは、過大すぎる褒め言葉です、嬉しいです。
      僕はこの映画を見て、自分に自信のない頃や学生時代を思い出してしまいいろんな事を考えてしまいました。モヤモヤとしつつも、素敵な映画だなあと思いました。
      あれだけみんなに頼られている桐島ですから、僕だったら後ろ姿でも見てしまったら「俺の思ってる桐島と違う」って感じてしまうかもしれません。と、書いてみて気づいたのですが、みんなにとっての桐島は、桐島本人を超えてしまっていたのかもしれません。自分を超える存在になってしまった「桐島」を引き受けるのは大変すぎるでしょうね。

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