キムタクの「生っぽさ」を見くびっている『安堂ロイド』

追記:2013/11/14 18:00

ありがたいことに前回と今回の記事は木村拓哉ファンの方の目にもとまり、色々意見を交換できる機会を得られた。そのやりとりの中で、自分の文章がわかりにくいことに気付いたので、補足しておこうと思う。ビビって、言い訳を書いているわけではないんです。そうみえるでしょうけど。

この記事で言いたいことは、「キムタクの凄さが最近分かってきた」っていうハナシ。ファンからすれば、何を今更の話でしょう。そして、「キムタク」であり続けて欲しいと思っている。いつ見てもキムタクは「キムタク」だなあと言う意味ではなく。

あとドラマの構成に関しては、「ロイドに感情があるのが変だ」ということではなく、「フリが弱い」と言いたいだけ。

もともと大ファンではない層 (自分を含め) からすると、ほとんどの場合、木村拓哉の「キムタク」部分しか見ていない。広告会社やテレビ局が作りあげる「キムタク」しか見えてこない。二役やっていても、いつもの「キムタク」だなと感じてしまうと、その二役の意味が無い。

キムタクは「艶」が強すぎて、ロイドにも感情があると思えてしまう、黎士と別人に見えない。

アンドロイドと感情というテーマで二役という点で、自分は「キムタク」らしさをどう抑えるかがこのドラマの鍵だと思っていた。あとは、ゴールデンタイムに難解なSFをやるというチャレンジを応援する姿勢で見ている。

「A.I. knows LOVE?」のサブタイトルから、人工知能が愛を知っていく感じていく過程を描くドラマだという理解をしていた。それは、単に感情を得て葛藤をするだけでなく、ある記憶を消去したくない、命令に従う事に抵抗する、もしくは黎士とロイドの選択などがテーマになるだろうと予測している。何かを選ぶと何かを捨てなければならない「切なさ」がこのドラマのテーマだと思ってみている。ブレードランナーの好きなところはあの切なさ。近未来を退廃的に描いた事も含め、我々はどこから来てどこへ向かうのか、という究極的な問いが切なく訴えてくる。

「切なさ」を描くのであれば、「フリを効かせる」方がいい。あるものが失われていく前の世界をきっちりと描き、アンドロイドが感情を得る前後を描き分ける必要がある。アンドロイドのぎこちなさをきちんと描く、もしくは黎士の人間らしさを強調することが必要。ある意味ではそういう目線「だけ」でこのドラマを見ているかもしれない。期待が大きすぎて、作り手の見せたいモノを受け止めようとしてないのかもしれないけど。

ファンからすれば、黎士がジェットコースターで気を失う表情をするだけで、人とアンドロイドの振り幅が大きいのかもしれない。

改めて1話を見直すと、アクションシーン、膝を前後に追って倒れ込む場面などの「固い」動きは見ていて気持ちが良い。アンドロイドなんだなと感じさせる。人間にそっくりに見えるのがアンドロイドだという話はあるが、1話目の演出意図は、機械らしく描いている。

ただ僕にはどうしても、1話目でのロイドは登場時点ですでに「怒り」を持っているように見える。キムタクの「艶」「生っぽさ」が強すぎるため人間くさく見えるのだ。ロイド登場前の黎士に「コンピュータは(前からあるデータから)選ぶことしか出来ないから」と言わせながら、死のうとした麻陽に「そんなに死にたいのか」というロイドにはすでに感情があるように見える。

だから、ロイドが少しずつ感情を持ち始めても当たりじゃんと思う。たしかに消したくない記憶にこだわっているんだから、最初からロイドには「感情」があるんだろう。

ただ、今後どちらかしか選べないモノの間で揺れ動くことへのフリが弱くなる。それが残念だって言いたい。その演出が気になって、せっかくの内容に入り込めない。

「キムタク」は偉大なるマンネリズムだと思っている。古典落語は誰もがオチまで分かっているけれど、噺家によって味わいは違う。パターナリズムでありながら「艶」で見せる「キムタク」。

「なんだ、いつもの『キムタク』じゃん」という思いを裏切って欲しいんだよなあ。

追記が長くなってしまった。

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要約:ロイドに最初から人間くさく見えたのは、キムタクの「生っぽさ」が凄すぎたからだと気付いた。感情を持つことで苦悩と葛藤も得る切なさを描くには、「機械っぽさ」というフリを効かせる必要があるんだけど、なんせ「キムタク」は艶っぽい。

ロイドは5話目で感情をインストールされたので、この話自体今更って事なんだけど言っておく。

SF好きなオッサンな自分は、SFを入口に安堂ロイドを見続けている。ロングバケーションには確実にハマり、ピアノの練習もした。結局弾けるようにならなかったけど。HERO も GOOD LUCK!もそれなりには見ていた自分。

ただ、若い頃は大衆的でPOPなものってなんかつまらないものだと“勘違い”していた。だからアイドルとかSMAPとか、どっかで馬鹿にしてたというか距離を取っていた。分かりにくいものや万人受けしないモノを好きで理解している自分が格好いいと思っていた。これって、どこか中二病を引きずっているんだろう。最近は、「ミーハー」な自分を認めるようになった。万人に受け入れられる事ってもの凄いことなんだって。

キムタクの凄さを、回が進むごとに実感する『安堂ロイド』。演技やドラマ自体の演出がどうこうというよりは、現象としての「キムタク」という存在の凄さに。だからこんなにこだわって記事書いてるんだろうな、3本目。

で、ロイドの人間くささが、最初から気になっている。

5話目になると、ロイドに感情プログラムがインストールされ、今まで助けてくれたサプリを敵と共に原子分解する時に苦悩の表情を見せる。Twitterで感想を観ていても、この切なさにキュンキュンしている声が多く観られる。それまで見せたことのない表情に、グッときたことは確か。

ただ、SF好きからすると、今ひとつ物足りない。でもね、「設定の詰めの甘さなどをあれこれ言うのは野暮だ」くらいのドラマであるとは思っている。このドラマは、連ドラでCG、特殊効果を使ってSFをやること自体がチャレンジだと思っているから。だからこそ、キムタクを起用するなどして話題を作らない限り、予算は引っ張って来れない。そうなるとキムタクが居ること前提で観ないとつまらない。

アメリカの偉大なSFテレビシリーズ、スタートレックが大好きな自分としては、いつか日本でもアメリカのように毎週あそこまでのSFXがあるドラマを見たいのだ。そのためにも『安堂ロイド』には頑張って欲しい。

多少、変な応援の仕方かもしれない。

だがそれを踏まえても、4話目で「ありがとう、名前 くれて」という時の表情が、「すでに感情あるじゃんっ!」って感じるのだ。5話目で感情がインストールされたけど、その前からすでに表情に感情っぽさを感じていた。

ドラマ設定としての説得力の少なさ

このドラマで、なにより一番勿体ないのは、SF設定上の説得力の少なさ。

細かな概念は理解させなくても、視聴者を「納得」させる必要がある。「よく分かんないけど、そういうことなんだろうな」って思わせてくれないと楽しくない。なんせ『安堂ロイド』にはそれが足りない。

説得力を持たせるには、『天空の城ラピュタ』の「飛行石」のようなものが必要になる。ラピュタの世界で、不思議なことは飛行石があるとすれば全て説明できる。というか、理解を超えたテクノロジーや理屈があるんだなと納得するしかない。

『安堂ロイド』では、ワームホールとか“質量がゼロであるモノは時空を超えられる”という原理がすべての元になっているんだろうけど。これに今ひとつ説得力が無い。未来が舞台なら「そういうもんか」って思えちゃうけど、安堂ロイドが辛いのは、現在が舞台なので「今の科学技術ではどうなんだ?」っていう疑問を持ちやすい。まあ、舞台を未来にするとセットも特撮も予算の都合上難しいよなあ。

特に残念なところが、ワードチョイス。「ダウンロード開始—ダウンロード完了」「原子分解の許可を申請—了解」「404 Not Found」などのように、“今よく聞くワード”を使う。

おそらくこのあたりは、SFを観ない人たちに分かってもらうようにインターネットの世界でイメージ出来るワードを使っているんだろうけど。その分、未来感がしないのだ。そして、SFファンには薄さを感じさせてしまう。「何だかよく分からないけれど、そういうことができるんだろうな」という気になれない。

それをおいといて一般視聴者目線で見ても、やはり残念なところがある。

アンドロイドとしてのリアリティを超える、キムタクの「生っぽさ」「艶」

『安堂ロイド』は設定上の説得力が少ないからこそ、ロイドが機械である感じさせるリアリティが必要になる。

しかし、これが残念ながら少ない。確かに、キムタクは頑張っている。ロイドの演技では瞬きをせず、できる限り表情変化を抑えている。黎士との比較で言えば、演技は大きく異なっている。それだけやっていても僕には“感情がない”ようには見えない。

5話を見てようやく分かったのだけれど、何よりキムタクは「生っぽい」のだ。あれだけ抑えた演技でもキムタクだと感じてしまう。キムタクという「艶」を。これはもうキムタクが「キムタク」であるゆえんなのだからしょうがない。

スタートレックでの一人二役アンドロイド

ちょっとスタートレックの話をする。アメリカの人気SFドラマ、スタートレックには「データ少佐」というキャラクターが登場する。

「データ少佐」には感情がなく(感情チップが埋め込まれていない)、人間のユーモアが理解できず文脈に応じて省略ができないように作られている。「I DON’T know」 ではなく「I DO NOT know」と言う。「後どれくらいで星に着く?」と聞かれれば、「5時間です」とは言わずに「5時間と26分32秒40ミリ秒です」と言ってしまう。

物語途中で「ローア」という「データ少佐」そっくりのアンドロイドが登場する。こちらは感情チップが埋め込まれており、人間そっくりの振る舞いをする。にやりとした笑いをする。「データ(Data)」は「情報」の意味だが、ローア(Lore)とは「物語」という意味で、同じ情報でありながらより人間らしい名前が付いているのが「ローア」。

で、この2つをブレント・スピナーという役者が一人二役で演じている。

これが何より凄い。同じ顔で同じ色に顔を塗っているのに、それぞれ違うのだ。

この写真の左が感情のない「データ」、右は感情機能を持っている「ローア」。

Data and Lore 2364

興味ある方はこの動画を。

『安堂ロイド』で、SFでキムタクが二役に挑戦すると聞いた時、このデータ少佐」をイメージした。凄いことのチャレンジだなと。役者からすれば二役というのはそれだけで大変なことだろう。その上、SFを連ドラでやるという。

キムタクの「生っぽさ」を見くびっている

前回の記事では「演出サイドが、キムタクの力を信じていない」と書いた。いつものキムタクらしさを残さないと、視聴者が観てくれないんじゃないかという恐れから、その「生っぽさ」を残しすぎているので、機械らしさが感じられず残念だと。

5話目を観て確信したのは、キムタクの「生っぽさ」を演出陣が見くびっている。見くびっていたのは自分も含めてなんだけど。

感情のないアンドロイドとしてキムタクを起用すると決めた時点で、演出側がより徹底的にその「生っぽさ」を封印しなければならない。スタートレックのデータ少佐のように、顔を白く塗るか、時折動きにスムーズでない箇所をいれるか。これはさすがにやり過ぎ感が否めないが、そこまでしないと、瞬き無し程度ではキムタクの「生感」を「殺せない」。

これは、賛辞を送っているつもりです。

* * *

ちょっと話は変わるが、クドカンの出たSMAP×SMAPでキムタクが旗揚げゲームで負けた。その時キムタクは固まって何も言わないでいる。シンゴが「ゴローちゃん、ほぐしてあげないと」と、稲垣吾郎を木村に押っつけ、ゴローが「木村くん、気持ちは分かるけど、負けたんだよ」ってツッコんで大きな笑いが起きる。

「ストイックで負けず嫌いで完璧なキムタク」はSMAPの中でもすでにいじりポイントになっていて、その他のメンバー(それぞれがスターなんだけど)がいじることで、団体芸として盤石になる。(この辺は嫁の視点を頂いちゃってます)。

* * *

これこそがキムタクの魅力だと分かってきた。キムタクは何をやっても「キムタク」。その通り。

だったら、それをどう料理するかは、演出サイドの問題。あれだけ「生」なんだから、機械らしく見せるなら、相当「キムタク」を抑えこまないと、説得力がない。そうそう抑えられるモノでは無いのだ、「キムタク」という怪物は。

キムタクの「生」は総出で抑えこまないと「殺せない」

周囲の登場人物の演技もひっくるめてかからないとあの「生」は抑えられないんじゃないかって思っている。麻陽は黎士が死んでからロイドを見て、最初は驚くけど、割とすぐに気持ちが近づいている印象を受けた。麻陽がロイドにすぐさま感情移入しているように見えるので、余計にロイドが機械に見えない。

まあ、もう感情プログラムインストールされたから、いまさら言ってもしょうがない話なんだけども。

感情を持つことで苦悩と葛藤も得ていくという切なさを描くには、機械っぽさというフリをうんと効かせる必要がある。そうなると「生っぽさ」は抑えないと。

「キムタク」の「生」がロイドを機械に見せない。その「生」を抑えこむには、総出でかからないとだめなんじゃない?

なにより自分が「キムタク」の「生っぽさ」「艶」にやられているので、ロイドが機械に見えないだけなのかもしれないんだけど。

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キムタクの「生っぽさ」を見くびっている『安堂ロイド』」への5件のフィードバック

  1. こんにちは。通りすがりですが、私の意見です。

    生っぽいと言ってるけど、2話から4話まででロイドには感情が自然発生してるのが
    ドラマをみてるとわかります。
    ロイド自身が自覚はしていないけど。

    サプリとの会話にもありますよね。
    「感情プログラムがなくても時には感情が発生する」

    なので感情ない状態でも少々人間ぽい演技いいのではないでしょうか?
    むしろその方があってるように思えます。

    アンドロイドは機械っぽいとは限らないと思います。

    いいね

  2. >kiyo さん
    コメントありがとうございます。嬉しいです。

    「感情」らしきものが発生してきていることは、僕も見ていて感じてはいました。
    他のところで「アンドロイドは人間そっくりの機械であるから、人間に見えてもいいのだ」という意見も頂きました。
    たしかに、その通りだと思います。ブレードランナーでも、特に機械らしさは描かれていないし
    「感情移入」の能力がないだけとして描かれていました。

    感情が発生していることが設定上、おかしいとは思っていないんです。

    ただ、タイトルが「A.I. knows LOVE?」と言っている以上、
    最初は「人工知能には愛(感情)がない」という描写をがっちり描いて欲しかったということが
    言いたいだけなんだ、と分かってきました。

    それでみると、1話目から、キムタクの表情の「艶」が「生々し」すぎると感じてしまったのです。
    身体の動きなどは非常に丁寧に「人間ではない」ように描いているにもかかわらず。

    kiyoさんのご意見頂いて感じたんですが、一番言いたいことがわかるように書けていないんですね。

    そのためには、「フリが弱い」ってことが言いたいんです。ようは。

    感情を獲得していく過程で、葛藤が生じていくことを描いて欲しい、という
    自分の願望中心にみているのかもしれません。

    5話目ともなり、感情が自然発生し始め、感情プログラムもインストールされたので
    この記事自体の言っていることは意味がないなあとは思っています。

    ご意見頂いて色々考えを深めることが出来ました。ありがとうございます。

    いいね

  3. >joshuaoさま
    先ほどのつたない私の文章にお返事ありがとうございます。
    joshuaoさんの貴重なご意見ありがとうございました。

    私も色々と考えさせていただくことができました。
    また話が進んで過去のこととかわかってくると変わってくるかもしれません。
    ありがとうございます。

    いいね

  4. 初めまして。楽しく読ませていただきました。
    SMAPファンでありながら「安堂ロイド」に関しては、この作品を通して少しでもSFファンが増えてくれないものかと祈るような気持ちで見ております。
    ただあまりにも熱く語りすぎるとどんどん引かれてしまうのではないかとためらう気持ちもあり、難しいところです。

    「安堂ロイド」を語る上では「スター・トレック」が欠かせないと私も思っていたのですが、映画版も次々公開中とは言え、その世界観から理解してもらうのは少々ハードルが高いかもしれませんね。

    とにかく日本の一テレビ局がここまで本腰を入れてSFと格闘しようとしてくれていることが何よりうれしいです。
    文学も映像も今のSFは熱を失いつつあるように感じ、勝手に危機感を抱いていました。

    「安堂ロイド」をきっかけに良い風が吹いてくることを期待しています。

    長々と失礼いたしました。

    いいね

    • 読んで頂き、コメントも頂けて嬉しいです。
      自分はももクロ好きですが、そのことを知らない人相手にどうやって話すかは難しいなあと思っています。
      ファン目線は一般目線とは違うことは分かっていますし。

      キムタクに関しては一般的な目線しか持っていなかったのですが、
      安堂ロイドをみていて色々と考えるようになりました。いろんな方と話せて楽しい限りです。

      安堂ロイドは、キムタクと柴咲コウ、一人二役、AIと感情、タイムマシン、連ドラでSF+SFX、いろんなポイントがあるので、いろんな見方が出きるドラマですよね。

      SFはアニメだとヱヴァンゲリヲンに代表されるように、市民権を得ているように思うんですけど。
      アニメがまだまだ「一般」ではないんですかね。
      ややさんがおっしゃるように、なにより実写でSFをゴールデンタイムにやるチャレンジの灯が消えないことだけを祈っています。

      いいね

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