記憶とキラキラを更新する 「走れ!美術室編」。

走れ 美術室編 全員

10月28日の衝撃

10月28日23:30、Twitter上のももクロファンは大騒ぎでした。

「走れ!」美術室編のMusic Video (MV)が公開され、11月5日は何か大きな発表がある。

本広監督が映画の撮影をしていて、それに関する発表ではないか、「幕が上がる」というタイトルなのではないかという推測も聞こえてきました。

「幕が上がる」とは高校演劇部を舞台にした物語だそうです。そのままももクロの物語でもあるという意見も見かけました。

* * * *

この映像は、今のももクロの魅力が凝縮されているように思いました。映画の世界を凝縮したものだったとしたら、かなり楽しみな映画です。

発表も気になるのですが、あの映像を見てこんな事を考えました。

「走れ!」にははいろんな想いが乗っている

「走れ!」のMVは存在しませんが、これまで“実質的”にはTokyo Idol Festival 2010 (TIF) のライブ映像(「走れ!」)がそれにあたります。

モテキ映画版でも使われており、いち楽曲というよりももクロを紹介するビデオといえます。

今と比べるととても幼く、笑顔で全ての力をぶつけるように歌い踊る6人。

特に、絞り出すように歌っている夏菜子の額に汗とともに髪の毛が張り付いている様は、ももクロという世界に人を引きずり込むハニーポットのような映像でした。

堂々としているようでもありながら、場慣れしていない様子も見え、必死ささえも感じる表情。

夏菜子 TIF2010

彼女たちが伝えようとするものから逃げることを許さない、ど真ん中ストレートの剛速球という感じです。

背も小さくて幼いけれど堂々としていて、異質なものが同居している。あの年代特有の煌(きら)めきを体現しているような映像でした。

その頃あちこちのライブ現場に足を運んでいたファンは、より鮮明にその煌めきを受けとっていたのだろうと思います。

あの頃盛んに言われた、「全力感」。TIFのころ僕はまだ彼女たちを知らなかったのですが、あの映像には心を掴まれました。心の中が熱くなってしまいます。

楽曲の魅力

改めて聞くと、楽曲自体の魅力がなにより強いんだと気づきました。

静寂のドアを開けるようにイントロがスタートし、綺麗でキャッチーなサビが印象的ですが、カラオケで歌おうと覚えようとして、かなり苦労しました。

サビ以外に、ほとんど繰り返しのメロディーがありません。2番になってもまた違うメロディー、サビにいったと思ったらまた違うメロディライン。

シンプルだけれど力強いバックに、表情豊かなメロディラインが載っています。すーっと閉じていくようなアウトロも魅力的です。

「走れ!」にはファンの様々な思いがあります。

楽曲の魅力だけでなく、暗い会場にサイリウムだけが光る光景をももクロとモノノフで作りあげることの出来る曲であることも大きいと思います。

なにより、無印(ももいろクローバー)時代の象徴でもある、あのライブ映像の「記憶」は大きいと思います。

美術室編へのいろんな想い

「走れ!美術室編」を見たときに、Twitterのモノノフはかなりざわついていました。自分の「走れ!」の思い出が書き換えられてしまう感覚を覚える人もいたように見えました。

「あの頃」との決別。まるで自分の青春が塗りつぶされてしまったかのような不安さえ感じていたのかもしれません。

一方で、あのきらめきに触れて、再び興味が膨らんだ人もいたようです。

自分に限らずあれをみて語りたくなった人は多かったようで、Twitter上でいろんな意見がやりとりされていました。

ライブの後に感想交流をすることがありますが、あのMVだけでずっと語り合いたくなる様なインパクトがありました。

それぞれのキャラクター

メンバーそれぞれが持っている一面ではありながら、映画の役柄を演じているようでもありました。

作り込まれているようで即興性も感じる、そんな映像。

れにちゃんは大人の階段を一足先に登っている。(一番ふざけてしまうけれど)。れに

あーりんはみんなより少し後輩で可愛がられている存在で。

あーりん

しおりんは大人への憧れを持っていてちょっと落ち着いて見せたがる。

しおり

杏果は、夏菜子を前に押しやり、飛び跳ねるれにちゃんに手を伸ばし、みんなの間をつなぐ存在。

ももか

夏菜子はみんなからからかわれながらも強く信頼を置かれている。みんなが背中を見ているし、みんなが背中を押してもくれる。

5人のつながりと即興性

10月18日に熊本の小さなライブハウスでやったライブ「有安杏果プレゼンツ チビッ子祭り2014」。

プレゼント企画が行われましたが、そのトークがとにかく面白いと思えたライブでした。

小さなステージだから5人がいつも一緒にいてそれを見られるというのも、楽しさの理由だったと思います。

やっぱり、ももクロって5人がわちゃわちゃとしてつながっているところがももクロの大きな魅力だと感じたイベント。

その場で作りあげていくという即興性も楽しさの一つでした。

* * * *

「走れ!美術室編」は、そんな5人のわちゃわちゃも即興性も、感じられるMVでした。

ソロで前に出てくるときもあれば、後ろでは「好き勝手」やっている。

「気付いたこの感情に」と前に出て歌う夏菜子は、後ろに視線をやるような仕草を見せ、仲間を意識しているようでした。

夏菜子

きっとこういうところに、5人の繋がりを感じるのだなあと。

多感な時期を体現している映像

ノスタルジックさも感じた映像でした。

どこか懐かしくて、昔のことだけど古びていかないような。記憶の中にある匂い。

あの4分54秒の映像だけで、“なにかに打ち込みつつ仲間と一緒の時を過ごしている”という空気を感じます。

自分が過ごした青春時代と同じではないけれど、共通に持っているイメージに呼応し、それがノスタルジーを感じさせたのかもしれません。

多感な時期を体現しているような映像でした。

* * * *

女性アイドルとして存在し続けることをめざした

ももクロは、3月に行った国立競技場ライブではっきりと宣言しました。

「笑顔を届けることにゴールはない」(百田夏菜子)。

「何年後も何十年後も一緒にいたいなって」(高城れに)。

「ももクロにこの人生をかけて、がんばりたい」(佐々木彩夏)。

普段あまりこのようなことを言わない玉井詩織さえも、「ずーっと、ももクロを存在させ続けましょう」と言いました。

(有安杏果はちょっと控えめで、「これからもずっとずーっと、ゆっくり歩調合わせながら前に進んでいけたら」と言っています。)

歳を重ねても女性アイドルとして存在し続けるという前人未踏の道を進むことを5人がそれぞれの口で語りました。

「旬は瞬」ではなく

日本では女性は若いことに大きな価値を置かれていて、特に女性アイドルはその一瞬の煌めきを消費されることが運命づけられたような存在です。

たしかに十代特有の煌(きら)めきというのはあって、あの時期だからこそ感じられるものがあります。

特にローティーンからハイティーンに移り変わる頃は、容姿も精神も中性的でどちらの性にも未分化であるので、神秘的な佇まいを感じさせることがあります。

出始めの頃の広末涼子、神木隆之介、宮沢りえ、栗山千明あたりを思い出します。

中性的で神秘的であり、未分化と未熟さとけなげさ。あの時だけしか見られない輝きだといえます。

2010年頃のももクロは、あの年齢ならではの輝きに加え、駆け上がって成長していく過程だからこそ見せられる気迫や熱量があったのでしょう(その頃はまだももクロを知らず、映像から想像するしかないのが残念ですが)。

 

かといって、「旬は瞬。輝く旬の時期は一瞬で過ぎてしまい、あとは下っていくだけ」、という発想に寄り添ってしまっては、この先ももクロを存在させ続けることは出来ません。

その年齢ならではの魅力をどうやってみせていくのか。それに対する今のももクロの答えをあのMVに見た気がしました。

「今そのとき」の魅力

これからも活動し続けるとなると、幼さや未成熟さくるけなげさだけではない輝きが必要になります。中性的な佇まいもおのずと減っていきます。

過去を否定するわけではなく、その時々の魅力をどう輝かせていくのか。

「走れ!美術室編」は、この時代でしか出せないももクロの魅力をぎゅーっと凝縮しているように感じました。

少女の面影を感じさせつつも、大人になりつつある表情も見せる。

“幼さとけなげさと全力感”という時代を経て、“大人と子どものはざま”の魅力。

夏菜子は、時おり非常に幼い声を出し、子どもっぽく無邪気な様子を見せます。けれどふと見せる表情にドキリとすることもあります(※)。

それは夏菜子だけではなく、ももクロは年齢的にもそういう時期です。

この微妙な時期に、少しずつ年齢の違う5人がいることで、様々な表情を見ることができます。

ほんの半年、1年の違いが大きな違いとして見えてきます。5人5様の「今」が見れるMVです。

(※ふと気づいたのですが、優香にもそういった多面性を感じます。志村けんとコントをやるときの優香とそれ以外の優香。)

キラキラの更新

映像からは、5人が信頼し合って仲良くふざけ合っている楽しさが感じられました。

大人っぽくもあり、無邪気な子供っぽさも同居している。それ自体がキラキラしている。TIF走れ!の時とは違うキラキラがありました。

最後の夏菜子のサビ、「君が好き、それだけで世界は…」では、照れた表情から一気に真っ直ぐに射貫いてくるような表情をみせます。

夏菜子 大サビ

大人でもない、かといって少女でもない。そして最後には5人が揃い、無邪気で楽しげな様子がとにかくキラキラしています。

煌めく若さにあふれた「TIF走れ!」を更新するかのような「走れ!美術室編」。

たしかにTIFの映像は鮮烈です。

けれどいまの彼女たちはあの時の彼女たちではない。

夏菜子が以前「平均年齢18歳、もう普通の年齢」と言ったのを聞いたことがあります。

平均年齢を言って驚かれる時代は過ぎてしまい、それに対する不安みたいなものを感じているのかもしれないと感じた覚えがあります。

この表情を見ると、若さだけを売りにするステージにはいないんだなと感じます(十分若いんですが)。

「走れ!」の記憶を更新する

この映像は、「あの時代を否定するではなく、今の年齢の魅力を表現していく。そうやって、共に新しいステージに進もう」というメッセージなのかな、と勝手に想像して興奮していました。

ももクロの仕掛けに、なにかしら文脈を見つけようとするファンの癖ですけれど。

メジャーデビュー、紅白出場を果たし、国立競技場ライブを成功させました。

「悪い大人は壁を作ってくれない、笑顔を届けることにゴールはない」と言うように、大きな(分かりやすい)物語は一定の区切りを付け、節目は以前より明確ではなくなっているように思えます。

若さを越えて活動していくことを宣言し、女性アイドル未踏の道をすすむ。昔のきらめきではなく、これまでのももクロではなく、今その時の輝きを見せていく。

“みんなが持っている「走れ!」の記憶を更新する”ために、今のももクロの魅力を映像にパッケージしたのではないか。そんなことを考えました。

「走れ!美術室編」 (もしかすると映画?) には、そんな決意と宣言が込められている気がしています。

これからの歩みを見せてくれた映像

これからも続くももクロの長い歩みを、ほんの少し見れたと思える映像。

「ももいろクローバー」から「ももいろクローバー”Z”」になったように。「走れ!」という楽曲を使うことで、新たな歴史の断面を作り出したように感じるMVでした。

やはりももクロは「今」が一番面白いです。

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